サービスエリアの飯 / ザボン 海老名SA上り店 黒匠ラーメン

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よく旅行に行く家族だった。

私の両親は海や山が好きな人で、小さいころはよく車で、信州や東北を中心にいろんなところに連れて行ってもらった。高速道路を使って行くので、数時間車に乗ることはよくあった。
そういった車の旅をしているときの一般的な楽しみの一つに、サービスエリアでの休憩とか食事ってあると思うの。思うのよ。でもね、私は両親とSAで食事をしたことはいままでない。

両親は自然は好きなのだけど、その代わりにあの人らがいう「世俗的」な楽しみを毛嫌いしていた。サービスエリアで高くて不味い飯を食べるのは馬鹿のやることで、最低限の飯をもって運転中にたべればいい。山に上って海に入って自然のものに触れ合うのが最高で、それ以外の娯楽なんてものは金持ちに騙されてるだけだから削るべき。
まぁそういう感じの人だったのよ。

おかげさまで私自身もしっかりひねくれさせてもらって、30過ぎた今でも恨みに思ってるし、いまだにあの人たちが毛嫌いしたものを心の底から楽しめないでいる自分がいる。

そんな中、久しぶりにサービスエリアでラーメンを食べることになった。
よくテレビで見かける海老名SA。こんなに綺麗で楽しいところなのよね。子供の頃、あたしはあんたの便所しかマトモに見たことなかったわ。

二階に上がればフードコート。ラーメンだけじゃなくたくさんのお店が並ぶ。立ち入ることさえ許されなかった場所で、今私は自由に自分の食べたいものを選ぶことができる。仲間たちと飯を食べていれば、界隈の別グループと偶然出会ったりもした。あぁ、今すごく楽しい。なのに、どうしてあの記憶を片隅に抱えなければいけないのだろう。

普段食べ歩く有名ラーメン屋に比べれば、確かに見劣りのする味かもしれない。けれど私にとって、このラーメンは子供のころに決して許されなかった禁断の食事でもある。テレビから流れる聞きなれたNHKニュースも、ここでは非日常的な演出となる。

違う人生を歩んでいた私は、この空間に懐かしさを感じるのだろうか。懐かしさはいい思い出とともに蘇るのだろうか。これは羨ましいと思う感情なのか、それともただの感傷なのか、よくわからないけど、今が楽しいからそれでいい、そう思うことにしたわ。

次の目標はメロンパンを買うこと。